章 6

藍戦舟はようやく千音の全身を内も外も隅々まで蜜の脂で丹念にマッサージし終えた。若き聖子の身体からは今や甘美な香りが漂い始めていた。侍女が玉の盆を持ち、その上には白い雪蚕の糸で織り上げた長衣が置かれていた。その長衣は優雅な造りで生地は薄く、聖子を身に纏えば、まるで雪山の神のような風情を醸し出した。

藍戦舟は別の侍女の盆から宝石を散りばめた白い額帯を取り、聖子の額に巻きつけた。千音は長い袖を一振りして外へと歩み出した。その一挙手一投足には、生まれながらの気高さと優雅さが滲み出ていた。

外から皇子・驚梧様がお見えになったとの知らせが届いた。

驚梧!

千音は彼だとは夢にも思わなかった。これまで...