章 23

千音は口を少し開けたまま、物語に聞き入り、手に持っていた果物も食べるのを忘れていた。

「南へ行くと荒野が広がっていて、そこには巨大な猛獣が住んでいる。体は大きく、鋭い牙を持ち、背後から襲いかかるのが得意だ。一撃で仕留め、並外れて凶暴だ」

「わぁ!会ったことあるの?」

藍戦舸は頷いた。

「どうやって逃げたの?」千音は緊張した様子で尋ねた。

「あいつに狙われたら逃げられない。風のように速いからな。命がけで戦うしかなかった」藍戦舸はゆっくりと答えた。「俺は奴を殺した」

千音は驚いて口を大きく開け、しばらくしてから尋ねた。「怪我はしなかったの?」

「背中を引っ掻かれて傷を負った。乗ってい...