72話

擦られていた肌の部分はすぐに赤くなった。眠っていたウィノナはその痛みを感じた。彼女は瞬きをして目を開け、目の前の人物を見た。それから眉をひそめて後ずさり、不機嫌そうに呟いた。「ザカリー、触らないで……」

その言葉が発せられた途端、部屋には死のような静寂が訪れ、二人の荒い呼吸音だけが響いた。

先ほどまで感情を抑えられていたザカリーだったが、今や完全に激怒していた!

体中から激しい敵意をみなぎらせ、彼は彼女を引き戻し、覆いかぶさるように身を乗り出した。「俺に触らせないだと? マシューなら触ってもいいってことか? ウィノナ、男の征服欲を掻き立てる術を知っているとは賢いと言うべきか、それとも愚か...