7話

「どうして手から血が出てるの？」レベッカは息をのみ、ウィノナの手に駆け寄ってそっと触れた。「どうしてそんな大きな切り傷が？　どこで擦ったの？」

ウィノナは何があったかを手短に説明した。「すごく腹が立ってて、荷物を運んでるときに注意してなかったの。それで擦りむいちゃった」

二階に着くなり、レベッカはパニックになってすぐに救急箱を探し始めた。「どうしてこんなひどい怪我を手に負ったりするの？　その手は宝物なのよ！」

レベッカが大げさだと感じ、ウィノナはおかしくなった。「大したことないわよ。ハンドモデルじゃないんだから。ちょっと切ったくらいで使えなくなるわけじゃないし」

しかし、レベッカは納得せず、きっぱりと首を横に振った。「あなたは美術品修復界の逸材なのよ。今朝、ベイカー氏から電話があって、あなたに彼の工房に参加してほしいって。あなたが自分の正体をそんなに秘密にしていなければ、とっくに彼の電話番号を教えてあげてたのに」

彼女は深いため息をついた。「あなたは世界的に有名な美術品修復家なのよ。あなたを見つけ出すためなら大金を払う人もたくさんいるのに、あのろくでなしのザッカリーのせいで隠れてるなんて。あなたがベイリー・グループで雑用をしていることを考えるたびに、胸が張り裂けそうになるわ」

レベッカの言葉は少々大げさだったが、いくらか真実も含まれていた。ウィノナは子供の頃から母親に美術品修復を学び、その後大学でさらに専門知識を深めた。その驚くべき技術により、彼女は業界で名の知れた修復家となり、卒業前から多くの美術館が彼女に仕事を依頼してきた。

だが、サリヴァン家との間にいくつかの問題があったため、彼女はザッカリーと結婚せざるを得なくなり、自分の技術を封印し、レベッカの助けを借りて依頼人を見つけ、簡単な個人依頼を引き受けることに頼っていた。

今、彼女はザッカリーとの離婚を計画し、辞表も提出したため、かつての専門職に戻ることができるのだ。

ウィノナは静かに言った。「ベイカー氏に連絡を取って、彼の工房に参加する準備ができたと伝えてもらえる？」

嘆いていたレベッカは、その言葉に衝撃を受けた。「待って、何？　決心したの？　もうザッカリーの住み込み家政婦役は終わり？」

レベッカは、誰もが欲しがるパーソナルアシスタントの仕事を住み込み家政婦と呼び、ウィノナは笑うべきか泣くべきか分からなかった。「それは以前の話よ。でも、知ってるでしょ、私たちの契約はあと三ヶ月で終わるの。それに、ザッカリーとの離婚の準備も進めている。ベイカー氏とは早めに合意して、自分のための次の道を探す方がいいわ」

レベッカは力強く彼女の肩を叩いた。「ウィノナ、もっと早くそうすべきだったのよ。ところで、ザッカリーは離婚届にサインしたの？」

ウィノナの顔が曇った。「ううん、ザッカリーは署名を拒否してるの。お金は一銭もいらないって言ったのに、彼はむかついて、私の銀行のカードを凍結したわ」

レベッカは眉をひそめた。「それは変ね。彼はフィオナにベタ惚れじゃなかったの？　もしかして……」

レベッカは突然、手を叩き、何か閃いたような顔をした。「彼はきっと、自分を振ったフィオナのことをまだ根に持っているのよ。だから今、離婚を引き延ばしてフィオナに嫉妬させようとしてるんだわ。もしフィオナが、彼がまだ魅力的な男だって知れば、二度と彼を振ろうなんて思わないでしょうから」

ウィノナは腑に落ちた。「そうよ、彼はフィオナの前で、私にバッグを買ってあげたいとさえ言ったわ」

「その通りよ」レベッカは目を輝かせた。「わざとやってるのよ。最低な男ね。結婚証明書をネットにアップしちゃいなさいよ、そうすればフィオナが不倫相手みたいに見えるわ。彼はフィオナの名誉を守るために、あなたと離婚して彼女と結婚したくて必死になるはずよ」

ウィノナは少し考えた。「ううん、もし事が大きくなって彼がもっと怒ったら、私が離れるのが難しくなるわ。それに、まだ次の恋を見つけたいの。こんな面倒なことになったら、誰が私と付き合いたがる？」

レベッカは頷き、ウィノナが本気でザッカリーから離れようとしているのを理解した。

この三年間、レベッカはウィノナがザッカリーが引き起こす面倒事に巻き込まれていくのを見てきて、友人として何もしてあげられない無力感を感じていた。今、ウィノナが行動を起こす準備ができたことに、レベッカは胸が躍った。

「そんなことは忘れましょ。次の本当の愛を見つけるお祝いに、メキシコ料理でも食べに行きましょ。きっと素敵な人よ！」

彼女が言い終わるか終わらないかのうちに、ドアベルが鳴った。

レベッカがドアを開けながら呟くと、外にはベイリー家の運転手、ブライアン・フォードが立っていた。彼はかなりしょげた様子だった。「ベイリー夫人、旦那様が下でお待ちです。急いで下へお越しください」

ブライアンがウィノナに対してこれほど敬意のこもった口調を使ったのは初めてで、彼女は驚いた。どうやらザッカリーは本気で怒っているらしい。自分が家を出たことが、彼をこんなに怒らせているのだろうか？

しかし、それも当然かもしれない。ずっと自分に媚びへつらっていた人間が突然それをやめたら、誰だって気分を害するだろう。

ウィノナは軽く首を横に振った。「待ちたいなら、待たせておけばいいわ。私は忙しいの」

同じく着替えを済ませたレベッカも口を挟んだ。「そうよ、私たちは忙しいの。どいてちょうだい、メキシコ料理を食べに行くのを邪魔しないで」

ショックを受けているブライアンを無視して、彼女はウィノナを引っ張って階下へ向かった。

階下では、ザッカリーが腕を組んで車のそばに立ち、険しい顔つきをしていた。

ウィノナが降りてくるのを見て、彼はブライアンが彼女を説得して一緒に家に帰るのだと思った。表情には出さなかったが、安堵のため息をついた。

ウィノナの突然の爆発と離婚要求は、長年の甘やかしの結果だろうと彼は嘲笑した。「また逃げるつもりか？」

ウィノナは聞こえないふりをして顔をそむけ、大股で彼のそばを通り過ぎた。

ウィノナが一緒に家に帰るつもりがないことに気づき、ザッカリーはまず呆然とし、それから顔が険しくなり、深い瞳には嵐のような怒りが宿った。

彼は素早くウィノナのそばに歩み寄り、彼女の細い手首を掴むと、歯を食いしばりながら言葉を絞り出した。「どこへ行くつもりだ？」

ウィノナは痛みに顔をしかめ、彼の手を振り払った。「私たちのスラム街に何の御用かしら？」

数年前、レベッカがここに新しい家を買ったとき、ウィノナは興奮して引っ越しを手伝い、その喜びをインスタグラムで共有した。

その時、ザッカリーからメッセージが送られてきたのだ：【インスタの投稿を削除しろ。あんなスラム街の何がいいんだ？ 君の品位が下がる】

有頂天だったウィノナは、冷水を浴びせられたような気分になった。彼女は投稿を削除し、二度と気軽に何かを投稿することはなくなった。

今になって昔の話を持ち出したのは、純粋にザッカリーを不快にさせるためだった。

しかし、彼女の期待に反して、ザッカリーはその当てこすりに気づかなかった。そんな些細なことは、彼の記憶から完全に抜け落ちていたのだ。彼はこめかみをもんだ。「スラム街だと分かっているなら、なぜここに来る？ 屋敷だけでは不満なのか？」