64話

活発な議論に興じていた人物は、突然の声に驚き、携帯電話を持ったまま反射的に振り返った。

素早く手を背中に隠し、言った。「……コリンズさん」

ディランは厳格というわけではなかったが、ベイリー氏の補佐であり、ベイリー氏の代理とも言える存在だった。ベイリー氏が、休憩時間であろうと、社内で従業員がゴシップに興じるのを嫌っていることは周知の事実だった。

「コリンズさん、罰金は自分で財務部に行って払いますから。見なかったことにしていただけませんか? つい、うっかりクリックして、ちらっと見てしまっただけなんです」

ディランは眉をひそめ、しつこく問い詰めた。「番組の名前は何だ? 余計なことは言わず、ま...