552話

アンソニーは意図的にレベッカを挑発しているようだった。「やりたければどうぞ。俺は構わない」

「夢でも見てなさい」レベッカは呟いたが、すぐ目の前にあるアンソニーの顔を見つめると、声は和らいだ。法廷を支配し、あらゆる裁判に勝訴するアンソニーには、彼女を圧倒するようなオーラがあった。

レベッカはアンソニーの胸を押し、距離を取ろうとした。「少し離れて」

座っているときはまだよかったが、立ち上がると二人の距離は触れそうなほど近くになった。レベッカは自分の息がアンソニーの顔にかかってしまうのを恐れ、大きく息をすることも憚られた。

アンソニーは片眉を上げた。「近すぎて話しにくいか?」

「ええ、その...