446話

ニコラスとアビゲイルが個室から出ると、フランクと鉢合わせになった。

ニコラスは危うく「父さん」と呼びかけそうになったが、なんとかそれを抑え込み、ただ丁寧に頷いた。「フランクさん」

フランクは片眉を上げた。「私のことを知っているのかね?」

ニコラスは答えた。「もちろんです。あなたはモードシティのターナー家の当主でしょう。ビジネス界であなたを知らない者はいませんよ」

フランクはにやりと笑った。「君はザカリーに似ているな。お世辞の腕も、まるで彼そっくりだ」

ニコラスは黙り込んだ。(頼むから、人前で俺の正体をばらさないでくれ)と心の中で思った。

二人に話がある様子を見て、アビゲイルは失礼し...