420話

ラムゼイ・グループのオフィスは、少し離れた場所にあった。後になって借りたものだ。都心部にあった古いビルは維持費がかさみすぎて、一年ほど前に売却されたのである。

今では、ラムゼイ・グループの階下にはカフェが一軒あるだけだ。

ウィノナが見上げると、すぐに窓際に座るニコラスの姿が目に入った。探す手間が省けた。

レオンもそこにいた。

「こんにちは、サリヴァンさん」

ウィノナは彼に頷き返し、ニコラスの向かいの席に腰を下ろすと、何気なく買い物袋を脇に置いた。

ニコラスは腕時計に目をやり、それから彼女の買い物袋のロゴに視線を移した。紳士服店のものだ。

彼はからかうような笑みを浮かべて言った。「入札のことは...