419話

ニコラスはレオンを一瞥し、ハンカチを掴み取った。

長年ザカリーの右腕を務めてきたディランは、彼の癖をすべて把握していた。確かにザカリーは潔癖症だが、握手もできないほどひどいわけではない。ベイリー夫人がたった今握手した手を、その男が念入りに拭いているのを見ながらも、ディランは口を閉ざしていた。

目の前の男はベイリー氏によく似ていたが、雰囲気もスタイルも、そして行動も全く異なっていた。

ウィノナは黙っていた。

彼女の心は千々に乱れていた。ニコラスが去っていくのを見ても、引き止めようとはしなかった。

今や彼はベイリー・グループのライバルであるラムゼイ家の末息子なのだ。彼が消えてしまう心配は...