355話

ウィノナは素早くひったくるように電話を取った。そのおかげで、ザッカリーの怒りもいくらか和らいだ。「今夜、ディナーの予約取ったんだ。今どこにいる?迎えに行くよ」

このことをディランが耳にしたら、きっと盛大に目を回しただろう。ついさっき、誰にも甘い言葉はかけないと誓ったのはどこの誰だったか? やっと上司も骨のあるところを見せたと思ったのに、結局、以前と何も変わっていなかったのだ。

「ええ、いいわよ」ウィノナの機嫌は百八十度変わった。「レストランの住所だけ送ってちょうだい。タクシーで行くから」

ザッカリーの緊張が解け、顔に笑みが忍び寄った。

やっぱりそうだ。自分とフランクの間で、ウィノナはま...