346話

憂鬱な雰囲気は一瞬にして吹き飛んだ。ウィノナは呆れたようにこめかみを揉み、手で顔を隠すようにしながら、横目でオースティンを睨みつけた。「もう行くんでしょう? そんな失礼なこと言わないでくれる? 十日や半月も寝たきりになりたいわけ?」

オースティンは声を潜めて答えた。「分かってないな。男なんてみんなマゾヒストなんだよ。手に入らないものほど欲しくなる。完全に自分のものにしてしまうと、もう手応えがないと感じる。時間が経てば、お前への興味を失って、他の女に気が向き始める。常に危機感を抱かせ続けなきゃダメだ。彼がいなくても、お前を狙ってる男はいくらでもいるってことを分からせるんだ。そうして初めて、彼は...