331話

ウィノナが何を見たのか、オースティンは分かっていたが、瞬きひとつしなかった。「ただのかすり傷だ。二、三日で治る」

「胸の包帯が血でびっしょりなのに、それをかすり傷ですって?」

ウィノナが彼から毛布を引き剥がそうとしたが、オースティンはその手を掴んだ。「そんなに急ぐなよ。もしズボンを穿いてなかったらどうする?」

彼の手は燃えるように熱かった。ウィノナは彼の額に触れた。「熱があるわ。最後に包帯を替えたのはいつ?」

最上階は蒸し暑く、扇風機が一台回っているだけだった。

数分いるだけで彼女でさえ暑さに耐えられないのに、ましてや怪我人がいるのだ。

オースティンは衰弱し、かろうじて意識がある程度だった。電...