323話

ウィノナはふと松の香りを嗅ぎ取った。マシューだった。

彼女は立ち止まり、背筋を伸ばして彼の方から一歩下がった。「ありがとう、何かにつまずいただけだと思う」

視線を下に落とす。地面は滑らかで、何もない。『私、何につまずいたんだろう?』と彼女は思った。

マシューは彼女が地面を見つめているのに気づいた。「どうしたんだ?」

ウィノナは首を振った。「なんでもない、行きましょう」

気のせいだったのかもしれない。

近くの車の中で、ザカリーはその一部始終を見ていた。

遠すぎて彼女がどうやって転んだかは見えなかったが、あんな平坦な道で転ぶなんて、マシューが何か卑怯な手を使ったに違いないと彼は推測し...