311話

ザカリーは彼女を一瞥した。気楽な部屋着姿ではあったが、その高貴で控えめな態度は崩れていない。「彼に何か用か?」

「ええ」ウィノナは答えた。「友達の弟の訴訟を手伝ってほしいの」

「レベッカか?」ザカリーは尋ねた。彼女には友人が少なく、ましてや真夜中に駆けつけるほどの相手となると、さらに限られる。「どんな事件なんだ?」

「正当防衛よ。でも相手側は彼を傷害罪で訴えているの」

ザカリーは片眉を上げた。「彼は刑事事件は扱わない」

アンソニーは金融紛争の分野で自身の地位を築き上げていた。勝算は薄くとも実入りの大きい案件を手掛け、高名なベイリー・グループの法務部門の設計者として、その評判は裕福で著...