215話

元々動きにくかった右手を、ザカリーは怪我していた。しかも、手で切り分ける必要のある料理を注文していたのだ。

ウィノナは顔を上げずとも、周囲の興奮した視線を感じ取ることができた。彼女は歯を食いしばると、ザカリーの耳元に顔を寄せ、声を潜めて尋ねた。「あなた、どうかしてるんじゃないの?」

ザカリーは手を持ち上げ、巻かれたガーゼがはっきり見えるようにした。「だからこそ、俺みたいな病人が君のところに来たんじゃないか?」

そういう意味のようではあったが、何かがしっくりこなかった。

その騒ぎに、オフィスにいたマシューが気づいた。というより、秘書に呼ばれて出てきたのだ。

そこに立つ完璧にお似合いの二...