211話

よほど愚かでなければ、犬に肉まんを与えるような真似はしないだろう。

昨日カルロスが母親の遺産について言及したのを聞いて、ウィノナがそのことを考えていたら、今度はこれだ。彼女は足元に落ちた名刺を拾い上げ、借り手の身元調査もせずに、これほどの大金をこれほど迅速に貸し出せる会社とは一体どこなのだろうかと考えた。

明らかに、彼女の遺産を狙った罠だ。

数日も待てないとは、なんと性急なことか。

「我々が心配しているのはカルロスの評判ではありません、ベイリー夫人、あなたの評判です。離婚されたとはいえ、夫婦の縁は百日続くもの。ベイリー家の莫大な富をもってすれば、元妻が債権者に追い詰められて死ぬまで見過ごすわけ...