章 390

でも困るのは、どんなに聞いても彼女は名前すら教えてくれないし、他の情報なんてもっと無理だということだ。

不思議なことに、それでも僕たちはとても話が合う。

この神秘的な雰囲気が、男を無意識のうちに追いかけさせるんだろうか。

彼女の話し方から、活力に満ちて、考えがあって、しっかりした意見を持つ女性だと感じる。彼女の卓越した囲碁の腕前からも、そのことが窺える。

時々、頭の中で彼女の姿を想像してしまう。彼女のベールはモナリザの微笑のように、僕を虜にしてしまう。

でも彼女はいつも決まった時間に来て、決まった時間に去る。僕がいなくても遅れることはないし、引き止めても足を止めることはない。

約束の時間を決め...