章 266

「まさか彼はまだ夜食を食べに行きたくて仕方ないんじゃないだろうな」と思った瞬間、彼はその行動で答えを示してくれた。

前を歩く男は立ち止まることなく、道路を横切り、真っ直ぐ向かいの屋台へと向かっていった。

店の中まで追いかけるべきか迷った。店内に入れば距離が近すぎて気づかれるか、最悪顔を覚えられていて正体がバレてしまえば、ここまでの努力が水の泡だ。

かといって追わなければ、店に裏口があるかもわからないし、そこからこっそり逃げられる可能性もある。

「どうしよう?」妻が隣で焦りながら尋ねた。

躊躇しているうちに、向かいの男はすでに道路を渡り終えていた。

「行くぞ」私は決心した。もし正体がバレて逃げよ...