章 617

映画館を出た李羨羨は、そのまま家に帰らず、夫の会社へとタクシーを拾った。

先ほど映画を見ている間、彼女は夫が自分に嘘をついているのではないかと不安になっていた。

例えば、夫は残業などしておらず、別の女と関係を持っているのではないか。

そして、その後家に帰ってきた夫は「仕事で疲れた」と言い、彼女に構う気力もないなどと言い訳するのではないか。

映画館から夫の会社までそれほど遠くなかったため、タクシーで10分ほどで彼女はオフィスビルの前に立っていた。

2ヶ月前に一度訪れたことがあったので、李羨羨は迷うことなく5階にあるハイテックソフトウェア開発有限会社の入り口まで来た。

ドアが閉まっているのを見て、...