章 499

孫婉渓は精巧なハンドバッグを肩にかけ、階段を上ろうとした時、突然立ち止まった。「カバン持っていてくれる?ちょっとトイレ行ってくるわ」

趙哲は仕方なく頭を振りながらバッグを受け取った。

「早く行ってこいよ」

「ふん!」不機嫌そうに口を尖らせた孫婉渓だが、口論している暇はなく、急いでドアを押して中に入った。

病院のトイレは階段の奥にあり、もともと光があまり届かない場所だった。おまけにこの手の設備の悪い三流病院では、電気代を節約するため、昼間は見えようが見えまいが関係なく、照明をつけない。中が真っ暗なのを見て、孫婉渓は少し怖くなって足を止め、先に進めなくなった。

「そんなに急いでたんじゃない...