章 96

公園のあちこちには歩き回る患者や、車椅子に乗って日向ぼっこをする人々の姿があった。井燃はふと、前方で看護師が押す車椅子に付き添う長髪の背の高い男性が妙に見覚えがあるように感じたが、どこで見たのか思い出せなかった。その人も彼に気づいたようで、看護師に一言告げてから歩み寄ってきた。冷凛のクラスメイトだった!今日は髪を結んでいないから気づかなかったのだ。

「やあ、坊や、どうして一人でここに座ってるの?」万林羽が先に声をかけた。この子は病院着を着て、そばに誰もいない。

「坊やじゃない。病気で入院してるだけだけど、何か問題でも?」井燃の口調はかなり悪く、彼と話す気がないようだった。

万林羽は喉仏の...