章 5

拒絶されるのは確かに辛いものだが、彼に一杯おごるという気持ちは、井燃の傷ついた心への慰めになったはずだ。こういうことは焦ってはいけない。心の中で自分を励まし、諦めないと誓った。

冷凛の酒量は非常に優れていた。一つには遺伝で、両親も日頃から酒を飲む習慣があったこと。二つ目は仕事柄、付き合いの席も多かったからだ。金曜の夜にここで一人酒を楽しむのは何年も続けている習慣で、酔いつぶれることなく、ただリラックスするためのものだった。一方の井燃は全く違った。酒に弱いくせに強がり、冷凛に子供扱いされるのを恐れ、自分が彼を追いかけられる立派な大人の男性だと必死に証明しようとしていた。そんな様子は冷凛の目から逃れるはずもなく、何かを証明しようとすればするほど、自信のなさの表れにしか見えなかった。

「乾杯、冷さん。そう呼んでもいいですか?秦さんから名前を教えてもらって、男が好きだとも聞きました。でも、どうして僕のことは好きになってくれないんですか?」井燃はたった二杯で顔が赤くなり、頬が火照っていた。

「それを飲んだら、もう飲むのはやめろ。こんなに弱いくせに見知らぬ人と酒を飲むなんて」冷凛は人の酒量がここまで弱いとは思ってもいなかった。自分の同僚たちといえば、誰もが酒樽で育ったような酒豪ばかりだったから。

実は井燃はそれほど酔っていなかった。少し頭がふらつく程度だったが、厚かましい言葉は酔った勢いで言った方が口にしやすいというだけのことだ。彼だって見栄というものがある。

「わかりました、もう飲みません。言うこと聞きますから。僕があなたに好かれるとは思ってませんでした。本当に。ただ、僕があなたを好きでいることを拒絶しないでください。生まれて初めて好きになった人なんです。そんな残酷なことしないでください」井燃は大きな瞳で冷凛を見つめた。その目は誠実で素直そのもので、冷凛が不機嫌になって追い払われるのを恐れているようだった。たとえ好かれなくても、少しでも近くにいたかった。愛する側の人間がこうも卑屈になり、愛される側の人間が傷つける権利を持つなんて。そして突然、冷凛が自分を送らないと言っていたことを思い出したようだった。もちろん、冷凛に送ってもらうわけにもいかなかった。学校に住んでいることがバレてしまう。まだ完全に酔っていないうちに、井燃は急いで付け加えた。「お酒をごちそうさまでした。もう行きます。このままだともっと酔って恥をかきそうなので」井燃は冷凛にキスしたい衝動をぐっとこらえ、しょんぼりと冷凛を一瞥してから外へ向かった。

冷凛はこれまで数え切れないほどの告白を受けてきた。周囲の人からの告白、以前サークルにいた頃のMからの告白。彼はいつも徹底的に断り、相手に一片の幻想や曖昧さも残さなかった。井燃への拒絶もそうだった。しかし、井燃が素直に立ち去る姿を見て、自分の言った言葉を一つ一つ覚えていて、きちんと守っていることに気づいた。食事の音を立てないこと、家まで送らないこと、完全に酔う前に自ら立ち去ること。冷凛の心は何かに掴まれたような感覚に襲われた。痛くはないが、動揺させられた。彼がまだ若いこと、酔って一人で帰るのが心配になった。考えがまとまらないうちに、体が先に動いて店を出ていた。

地下鉄の駅は目の前の交差点を左に曲がったところにあった。冷凛が外に出ると、交差点で消えかけていく井燃の姿が見えた。長い脚の利点はこういう時に発揮される。地下鉄の入口が見える場所まで来たところで、井燃の横に追いついた。

「お前、酔ってるだろう。本当に何かあったら俺にも責任がある。やっぱり送るよ」井燃に誤解されないよう、冷凛は先に言い訳じみたことを口にした。

井燃は冷凛が追いかけてきてくれるとは思わなかったし、まさか送ってくれるとも。喜びも束の間、今度は泣きたくなった。ちくしょう、学校に送られたら自分で自分の顔に泥を塗るようなものじゃないか。

「大丈夫です。一人で帰れます。そんなに酔ってません。ありがとう、冷さん」

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