章 48

「こんにちは、冷社長の運転手をしております、葉春洋と申します。井さんですよね?」葉春洋は関係を詮索する余裕もなく、急いで挨拶した。

「こんにちは、そうです。井燃と呼んでください。こちらは友人の温子明です。わざわざ足を運んでいただき、ありがとうございます」井燃は立ち上がって言った。

「井さん、そんなご丁寧に。冷社長から、お二人を冷さんのお宅までお送りするようにと指示を受けております」今から出発できますか?

「いや、僕は寮に戻るだけで大丈夫です」温子明は井燃を見た。井燃はふと冷凛の意図を理解した。退院は許可されたものの、傷が完治するにはあと数日かかる。寮ではお風呂も薬の塗り直しも不便だろう。...