章 41

「どうしよう、この人はちょっと優しくされるだけで、一度抱きしめられるだけで、またすぐに叩かれても構わないと思ってしまう」

冷凛もこの小さな仕草に気を和らげた。まるで外で嫌な思いをして飼い主の胸に飛び込んで甘える子犬のようだ。その嫌な思いを与えたのは自分だということをすっかり忘れているかのように。

「先生、病院で黙っていたのは拗ねていたわけじゃなくて、喋ったら先生に借りがあることを思い出させて、二人の前で殴られるのが怖かったんです。だから家に着いたらすぐに罰を請うたんです。逃げるつもりも拗ねるつもりもなかったことを伝えたくて」井燃は胸に顔を埋めたまま、籠もった声で言った。誤解は絶対に避けたい...