章 22

彼の過去2年間の日々で、好きな人にも出会わず、託す相手のSにも巡り会わず、自分を見つめるための経験も何もなかった。彼はまるで海に浮かぶ小舟のように、波に左右されながら、どこにも停泊できずにいた。

若者の感情は常に理性に勝つもの。すべてを考え整理する前に、彼はすでに和野の入り口まで歩いていた。先ほど虞一が帰る時に「自分の身を守るように」と言い残した言葉が、今となっては何とも皮肉に聞こえる。井燃は先に駐車場を一周したが、冷凛の車は見当たらなかった。安心すべきか、失望すべきか分からない。会うのが怖いのに、会いたいという気持ちもある。

井燃が店内に入ると、空席がなく、ちょうど帰ろうとした時、店長の...