章 429

包室に案内されると、中には特別な香りが漂っていた。だが、そこの主役は栾星ではなかった。栾星どころか、女の子ですらなく、一人の男だった。今どきのチャラ男御用達のツーブロックパーマをかけ、大きなフレームの眼鏡をかけている。

正直に言えば、かなりイケメンで、いわゆる「美男子」という感じだった。

「こちら、私の兄の慕容龍よ。こっちが杨晨宇、前に話したことがある人」

慕容雪の紹介と共に、慕容龍は席から立ち上がり、私と握手した。握手はしたものの、私は完全に呆気にとられていた。まさか今、京城の有力家系の御曹司と対面しているなんて。世間では慕容家の老人が最近体調を崩し、すべての事業を息子に任せようとして...