章 70

「一見すると目立たない人がいる。

でも、ある瞬間に目が離せなくなる人が。

雲想が将棋を指すとき、内側から滲み出る魅力がある。痩せた背筋がピンと伸び、体を少し前に傾け、普段の内向的な姿が鋭さへと変わる。まるで儒将が戦場に立ち、胸を張って兵を指揮するかのように。

それは彼女が長年にわたり祖父の影響を受け、無意識のうちに真似て身についたものだった。

「お嬢さん、腕前がいいね。誰に習ったのかね?」老人は目の前の盤面を賞賛の眼差しで見つめた。彼をここまで追い詰める若者は初めてだった。

遠い記憶の中で、彼はかつて将棋の優れた少女を見たことがあった。

「おじいちゃん……痛い……」

雲想が何か言おうとした時、...