


章 2
「蘭陽高校」は私立高校で、教師陣の質はB市のすべての高校の中でトップ3に入る。
そこで学ぶ生徒たちはほとんどが裕福か名家の出身者、あるいは成績優秀者だ。
雲想は再び学校からこっそり抜け出した。
誰が想像できただろうか。五日前まで彼女はマイホーム購入のために必死に残業をこなすOLだったのに、一夜明けると十七歳の雨季の少女に変わっていたなんて。
過去に戻ることは怖くない。怖いのは別人になってしまうことだ。
初めて鏡で今の姿を見たとき、彼女は鏡を叩き割りそうになった。
あの夜、屋上から広場の大型スクリーンに映る墨星澤の隣に立っていた女性が、まさに今の自分と同じ顔立ちをしていた。ただ一方は幼さが残り、もう一方はより優雅さを漂わせていた。
今でも彼女はなぜこうなったのか整理がつかない。
さらに受け入れ難いのは、夏君辰と同じクラスになり、しかも前後の席という関係になったことだ。
彼の後頭部を見るたびに、本を持ち上げて投げつけたくなる衝動に駆られる。
「さっきあいつがこの路地に入るのを見たぞ」と、派手な髪色に染めた不良たちが歩きながら話している。
雲想とすれ違う瞬間、風が服の裾をめくり、腰に差した刃物の柄が見えた。
その数人が路地の入り口から姿を消すのを待って、雲想は目を細めて立ち止まった。彼女が先ほど路地から出てきたとき、慌ただしく肩がぶつかった人物がいた。顔はよく見えなかったが、制服は見覚えがある。蘭陽のものだった。
墨星澤はまさか奴らがここまで追ってくるとは思わなかった。外側の制服を脱ぎ捨て、目に不敵な光を宿した。
「この野郎、前回は逃がしたが、今度はそう簡単にはいかねぇぞ」と、リーダー格の不良が腰のスイカ包丁を抜き、彼に向かって歩いてきた。
残りの連中も次々と包丁を抜き出した。墨星澤が喧嘩が強いことを知っていたので、今回は準備万端だった。
墨星澤の表情は変わらなかったが、心の中は冷えていた。素手なら一戦できる自信があった。
しかし、見栄だけは張らなければならない。どうあっても戦わねばならない。
雲想は路地の入り口を何度か行ったり来たりした。この路地は蘭陽高校の裏門に近く、授業後に近道をしたい生徒以外はあまり通らない場所だ。
路地の奥からはガシャンバシャンと格闘の音がかすかに聞こえ、誰かが興奮して「ぶっ殺せ!」と叫ぶ声も届いた。
「もしもし、110番ですか?こちらで集団暴行事件が発生しています。現場では腕が切断されて…そうです、急いで来てください」
突然の女性の声に斬り合いをしていた連中は驚いた。小さな不良たちもおそらく一瞬パニックになり、急いで刃物を片付けた。去り際に忘れずに警告した。「今日は運がよかったな。次に会ったら、ただじゃおかないぞ」
墨星澤は小さな不良たちを見送ることなく、路地の入り口の方向をじっと見た。
さっき助けてくれたのは、路地で出会ったあの女の子だろうか?
同じ制服を着ていたから、同じ学校の生徒に違いない。
雲想はそう叫んだ後、急いでその場を離れた。不良たちに見つかれば、後々面倒なことになりかねない。
64番のバスに乗り、五つ目の停留所で第三中学に到着する。
蘭陽高校と比べると、三中は間違いなく最下位クラスだ。
校風も良くなく、喧嘩や暴力沙汰が日常茶飯事だった。
雲想は以前ここで高校生活を送っていた。ただし高校2年生のときに転校してきたのだ。最初は発音の問題で、クラスメイトに長い間笑われていた。
そのとき田小野と知り合った。さっぱりとした短髪で、まるで男勝りの少女のように、素直に友達になろうと言ってくれた。
思いがけないことに、その友情は9年間続き、絆は深まる一方だった。田家の両親も彼女を自分の子どものように扱い、年中行事のたびに田小野に彼女を連れてくるよう言っていた。