章 6

「この男はほんとに呆れるな」と林讓は思った。アルファだ。信息素を少しも放っていなくても、オメガの本能を刺激して自ら信息素を解き放たせる。彼は虚しく笑った。弁解の声も出せないこの笑みが、老庄の怒りをさらに煽った。老庄は片手で彼の腹部を掴み、強く捻った。林讓が痛みで逃げようとすると、老庄は彼の腕を掴み、その腕に噛みついた。

まるで林讓の腕の肉を食いちぎろうとするかのように。林讓の美しい顔が歪み、失明した両目に微かな光が宿り、次第に生理的な涙が溢れ出した。彼は暗闇の中にいて、次の瞬間にどこから痛みが襲ってくるか分からない。三年経っても、まだ恐怖に震えていた。

しかし老庄には彼の苦痛の声が聞こえな...