章 869

「地下鉄の車内で物を取り出されて押し当てられるなんて、恥ずかしくて面目が丸つぶれる。妻はプライドと体面を何より大事にしているから、絶対にこんな状況を許すはずがない」

しかし、こんな目に遭いたくないと思えば思うほど、この男にこれ以上続けられたくないという気持ちが募る。だが妻には良い対策が思いつかない。かろうじて立っていられるほどの狭い空間に押し込められ、身動きすら取れない状態だった。

妻はその耐え難い状況を想像し、顔が火照るように熱くなるのを感じると言っていた。

先ほど奮い立たせた勇気も、今はすっかり萎えてしまっていた。

その後も妻が他の最善策を必死に考えている間も、背後から全身を密着させ...