章 865

しかし、妻が角に押し込められた切迫感から少し解放され、心の中でほっと一息ついたとき、「もしかして何か予想外の状況か、転機でも?」と思った矢先、その騒ぎは収まった。

だが次の瞬間、妻が考えを巡らせる余裕などなかった。地下鉄が駅に停車し、何人かが降り、さらに多くの人が乗り込んだ後のことだ。

混雑した車両が再び動き出し、静止状態から動き出す最初の揺れで車内全体のバランスが崩れた瞬間、妻は自分の考えが完全に間違っていたことに気づいた。

なぜなら、その時、一度は離れていたあの手が、後ろから再び妻の引き締まった腰にしっかりと掴みかかってきたのだ。以前は腕で固定していたが、今や妻は車両の隅に押し付けられ、身...