章 802

「知ってる?あの頃、私を追いかけてた人たちの中から、私はあなたを選んだのよ?旦那さん、あなたは大金持ちにはしてくれないかもしれないけど、私たちは衣食に困ってないでしょう。何より、私はあなたのようなまじめで誠実な性格が好きなの」妻は私に語りかけていた。私が何も言い出さないうちから、すでに優しく気遣うような口調で慰めの言葉をかけてきていた。

聞いていて何も言えなくなった。妻の目には、私はそういう人間なのだろう。

まじめで実直というのは、ある人にとっては現代社会では貴重な美点や信念だが、ある人にとっては無能の代名詞でもある。

そう思うと、少し軽くなっていた気持ちが一瞬で重くなった。

妻が林志...