章 576

府東公館へ向かう車の中で、李雪と張大海は思わず微笑んだ。なんということだろう、一代の宗師が警備員をやりたがるとは、誰も想像できないだろう。

今回も李雪は鐘家のツテを頼った。前回秦朗に学院での教官の件を相談したが、今に至るまで何の返答もなく、上層部からは催促が始まっていた。

ほどなくして車は府東公館の麓に到着した。車を降りると、山には霧が立ち込めていた。鐘九珍は思わず「おや?」と声を上げ、李雪と張大海も目を見開き、驚きの表情を浮かべた。

「鐘老、この木は何百年も生きているように見えますが」李雪は根が横に広がる巨木を指さして言った。

鐘九珍も内心不思議に思った。以前この府東公館に来たことが...