章 890

ドアが押し開かれ、中年の男性が入り口に現れ、中央に座る男性に向かって静かに言った。「韓部長、お客様がお見えになりました」

「お通ししてください」

韓部長はそう言いながら、椅子から立ち上がった。

この動作は一見何の変哲もないように見える。客が来たのだから、立ち上がって迎えるのは当然のことだ。

だが荊紅命たちは内心大いに驚き、互いに目を交わしながら席を立った。

荊紅命たちだけでなく、眼鏡をかけた秘書はさらに驚いていた。

彼は韓部長の機密秘書として、部長が華夏国内でどれほど崇高な地位にあるかを熟知していた。

公式の場で韓部長が自ら立ち上がって迎える人物といえば、少なくとも封疆大吏(地方...