章 448

星空の下、夜が深まるにつれ、寒気も一層厳しくなっていた。

青山避暑山荘の麓、小川のほとりに二つの黒い影が立ち、頭を垂れて水のせせらぎに耳を澄ませていた。

もし誰かがそばを通りかかれば、きっと驚いたことだろう。この辺りは余りにも人里離れた場所で、夜の十時過ぎにこんなところに二つの黒い影が立ち、長い間動かず、言葉も発さないとなれば、まるで幽霊か何かと間違えられかねない。

二つの黒い影の姿は定かではないが、山風が彼女たちの衣を翻すと、美しい体のラインが浮かび上がる。二人の女性だった。

一人は艶やかで、もう一人は凛とした佇まい。

多くの人は、凛とした佇まいの方が少女で、艶やかな方がその母親だと思うだろ...