章 1292

隋月月の口の中から突然現れたそのものは、まさに楊逍が酒を飲むために使っていたワイングラスだった。

まるで天が彼女の口に何かが詰め込まれる状態を特別気に入っているかのように、そのグラスのサイズは彼女の口をぴったりと塞ぐのにちょうど良い大きさだった。

楊逍がグラスを投げる時、絶妙な力加減を使っていた。

ガラスのワイングラスは、投げられた際に歯などの硬いものに当たれば、すぐに砕け散るはずだった。

だが、隋月月の口を塞いだこのグラスは、完全に無傷のままだった。

グラスが彼女の口を広げた状態で、彼女は口腔がガラスで傷つくことも構わず、歯でグラスを噛み砕こうとしても不可能だった。

ただ鼻から恐怖と悔しさに...