章 1210

勝利を目前にした蔵和さんは、なぜ怒りに震えたのか?

彼はそれを誰にも語ることはない!

彼はただその怒りを天国へと持ち去り、偉大なる神に訴えるだけだ。なぜ、両手で刀を振り上げ、上島桜花を真っ二つにしようとした瞬間に、茂みから人影が現れたのか、と。

それは若い男だった。すでに茂みの中に身を潜めていたのだ。

上島桜花の刀が蔵和によって弾き飛ばされ茂みに落ちた時、彼はそれをさっと掴み取っていた。

上島桜花が転がるように茂みへ飛び込んだ先には、その男がいて、彼女は男の上に覆いかぶさるような格好になり、顔と顔が向かい合い、男の左腕が彼女の腰に回されていた。

男が下で女が上という姿勢は、なんとも艶めかし...