章 1204

南方組のリーダーは、上島桜花と呼ばれる。

では、三浦の左胸、心臓のある位置に刺繍された三輪の満開の桜は、上島桜花への愛慕を表しているのだろうか?

違う。

桜は国花であり、服に桜を刺繍するのはごく普通のことで、人々はそれによって桜への愛を表現する。

だが三輪の逆「品」の字形に配された桜は、小木一郎にとって非凡な意味を持っていた。

小木一郎がかつて着ていたすべての上着には、妻が自ら手で胸元に三輪の桜を刺繍し、外出時の安全と仕事の無事を祈願していたのだ。

三輪の逆「品」の字形の桜は、彼のお守りだった。

だが妻に裏切られて以来、彼はそれらの服を着なくなった。

妻が三輪の逆「品」の字形の桜を刺繍した服を...