章 980

「それだけじゃないわ」杜潔は自分の医師免許証を取り出し、空中に掲げながら大声で言った。「この人は私の夫よ。私たちは旅行に行くところなの。この男が私に痴漢行為をしたから、訴えるわ」

杜潔の声はとても大きく、その場にいた全員に聞こえた。その卑劣な男はここまで聞いて、ようやく顔色を変えた。女性への痴漢行為というのは、この国でも軽い罪ではない。自分の地位や身分を考えると、本当に訴えられでもしたら、あまりにも割に合わないではないか。

そう思うと、男は後ずさりし始めた。誰も気づかないうちに逃げ出そうとしたのだ。

しかし残念なことに、林浩の体はすでに彼の側に素早く移動していた。大きな手を伸ばし、男の襟...