章 2063

「お姉さん、私よ、美伊よ!ドアを開けて!大事な話があるの!」

美伊の声を聞いた途端、しかもこんな時間に訪ねてきたということは何か重大なことがあったに違いないと悟った諾伊は、急いで起き上がり、服を着て、いとこの美伊のためにドアを開けに行った。

彼女は油ランプに火を灯し、ドアまで歩いて開けると、四十歳前後の小柄な美しい中年女性が油ランプを掲げて入り口に立っていた。

それは諾伊のいとこの美伊だった。美伊は諾伊より十歳年下で、かつてアバネフが媒酌人となって彼の右腕だったスーシーノに嫁がせた女性だった。当時、美伊が山に入って従姉の諾伊を訪ねた際、スーシーノに一目惚れされ、彼はアバネフに頼み込んで仲...