虚ろな喜び

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章 169

緊張のあまり、振り向くことができず、海面に浮かぶロープをただひたすら掴んでいた。

「体の力を抜いて、もっとリラックスして」

後ろから張兄の諭すような声が聞こえてきた。かすかに掠れた声には、何かを抑えているような様子が混じっていた。

彼は私の優美な背中のラインを食い入るように見つめ、目に浮かぶ赤い血走りは明らかに症状が出ていた!

その時の私はまだ水を飲んでしまう恐怖に囚われていて、張兄の異変に全く気づいていなかった。

恐怖を克服しようと息を止めて挑戦しようとした瞬間、突然何かが太ももにぶつかってきた。

波の衝撃のようでいて、少し違う。まるで海の小魚のような感触だった。

慌てて叫んだ。「張兄、海に...