第54話

マドックス

私たちは城を出てから二十分もしないうちに村に到着した。聞いていたダイビングショップはすぐに見つけることができ、ベータのセスに入口からそう遠くない駐車スペースに車を停めるよう頼んだ。まだ朝早い時間帯で、店舗周辺の活気はコーヒーハウスとパン屋に集中している。一方、ダイビングショップは開店しているようにも見えず、灯りも点いていない。

だがそんなことで諦めるつもりはない。

車から飛び降りて、ドアに向かい試しに開けてみる。灯りは点いておらず、窓には「営業中」の表示もないにもかかわらず、ドアが開いていることに安堵した。

公平を期すために言っておくと、「閉店」の表示もなかったのだ。

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