第527話

雨だれの音。ポタッ、ポタッ、ポタッ。

暗闇の中で目を開け、まばたきをする。今まで経験したことのないような痛みが体中を襲っているけれど、私は生きている。生きているけれど、牢獄の中だ。

膝立ちになり、薄汚れた湿った廊下と私を隔てる鉄格子へと這っていく。廊下はちらつく松明の光で照らされている。

格子を掴む前に躊躇したけれど、女神に感謝、これは銀ではなく鉄だ。これ以上耐えられるかどうか分からない…待って。

手首を松明の光に翳してみる。幅広くて継ぎ目のない銀の腕輪が両手首にぴったりとはめられている。鎖はない。壁に繋がれてもいない。手枷だ。すぐに引き抜こうとするけれど、できない。でも痛くはない。左...