第358話

エラ

明るい光。松と杉の鋭い香りを運ぶ柔らかく暖かい風。どこか遠くで優しい繊細な声が美しい歌—子守唄を歌っている。赤ちゃんが泣き声を漏らすと、優しくシッと静められる。

腕を撫でる手の感触。スイカズラとラベンダーの香りが空気を満たし、小鳥のさえずりが耳に響く。

背中に伝わる暖かさにさらに身を寄せる。リャットの香りが愛情深い抱擁のように私の感覚を包み込む。胸の奥、魂の中で、私たちを結ぶ糸が満足感を歌っている。彼の香りは以前より鋭くなっている。それは私が愛するすべて。私の魂に火をつけるすべてのもの…

私は突然意識を取り戻し、視界を晴らすために必死に瞬きをする。男性の囁き声が子守唄と小鳥のさえ...