第303話

リヤット

普段は朝食後こんなに長く食堂に残ることはない。もう9時近いというのに、外の空はまだ明るくなる気配すらない。バルコニーには銀色の雨のカーテンが激しく降りしきる中、私は三杯目のコーヒーを注ぎ、向かいの椅子に足を乗せて足首を組む。

洞窟のような広間の黒曜石の壁が、暖炉から放たれる光に照らされて輝いている。静かで平和だ。

二階分の高さがある木製の扉が勢いよく開き、両側の壁に激しくぶつかる。その衝撃音が部屋中に響き渡り、その後、足早な足音が続く。

「いったい何なのよ、リヤット?!」

エラは数歩離れたところで立ち止まり、嘲笑う。彼女の顔は真っ赤で、柔らかな打撲傷と腫れが散らばってい...