第56話

アドルフはローレルを舞踏会場から近くの応接室へと連れて行き、彼女を抱き寄せてため息をつきながら顔を寄せた。彼女の香りはいつものように温かく甘く、彼がこれまで何かがそうであると思ったこともないような方法で、心を落ち着かせるものだった。彼女にマークをして以来、何年も彼を引きずり下ろしていた疲労感は、ほぼ一夜で消え去っていた。

「君がいなくて寂しかったよ」と彼はささやいた。

ローレルは少し笑って、「今朝会ったばかりじゃない」と言った。

「それでも長すぎた」と彼は小さく笑いながら言い、彼女のこめかみにキスをした。「プレゼントだ」

ローレルは眉をひそめた。アドルフが彼女の手を取り、いくつかのチャ...