第3話

「美しい人、名前は？」彼の存在感は威圧的だった。私の思考は乱れ、頭の中で警告音が鳴り響いた。脳が最善策は逃げることだと判断していた。振り向いて、リサを探そうとした。

たぶん私はこういう環境や、ここに集まる人々、そして彼らの露骨な誘い方に慣れていないだけなのだろう。ああもう。露骨な誘い？本気？ケイト、あなた何時代の人間なの？

「君の友達は踊っていた男と楽しんでいるみたいだね。僕に少し注目してくれない？」

「あなたはストーカーか何か？」私は彼を見ないようにしながら尋ねた。自分の状況を少しでも楽にしようとして。

「何だって？」

突然、私の質問はまったく愚かに思えた。なんて恥ずかしい。彼を見ると、まだ微笑んでいた。とてもセクシー。彼には私をクレイジーな方法で揺さぶる何かがあった。二度と酒を飲まないと誓おう。

「あなたが私をつけてきたみたいに」長すぎる間、彼を見つめていたことに気づいた後、説明しようとした。

「君を見惚れていたら、誰かにやたら笑顔を向けていることに気づいたんだ。単なる友達だってわかって安心したよ」

「彼女が別の関係かもしれないとは思わなかった？」

「彼女が君の恋人なら、男と一緒にトイレに行くのを止めなかった？」

「ケイト、行くわよ！」リサが突然現れ、私の手を取ってダンスフロアへ引っ張っていった。リサというハリケーンに連れ去られ、選択の余地はなかった。

ダンスフロアで、彼が再びグラスを掲げるのが見えた。リサは私の横で踊っていた。私の手を握り、体を動かすよう促した。恥をかかせないでよ、リサ。特に彼が見ている前では。彼は興味をそそる人だった。馬鹿だけど、興味深い。彼の特徴リストにはまだまだ追加できそうだった。

ある時点で、私は諦めて体を動かし始めた。彼がまだ私を見ているのを想像しながら。自分がどれだけ滑稽に見えるかを想像して、ひとりで笑い始めたが、楽しかった。音楽のリズムに身を任せて。

数分後、バーに戻る途中、彼を見失った。姿を消してしまった。少しがっかりしたかもしれない。たぶん、ね。リサは今、さっき知り合った男性と話していた。

「ケイト？」

「なに？」

「トイレに行こう」私はうなずいた。彼女は再び私の手を引っ張り、バーの奥へと連れて行った。「彼、かっこいいと思わない？」

「ええ、面白い人ね。わかった、私は廊下で待ってるわ。ちょっと混んでるから」私は彼女の手を離した。照明や大音量の音楽、そしてもちろん酒のせいで少しめまいがしていた。結局、隅に寄りかかり、吐き気を払うために深呼吸した。

「それで、ケイトだよね？」声がする方に向き直ると、彼にぶつかった。彼の顔を見て安心し、おそらく大きすぎる笑顔を見せてしまった。でも彼も笑顔を返してくれた。「僕のことを無視し続けるつもり？」なぜ彼はいつもそんなにセクシーな話し方をするのだろう？

「いいえ、あなたがラッキーなら」

「僕は運なんて信じないんだ」彼は傲慢に微笑んだ。いや、彼には傲慢なオーラがあった。

「そう？じゃあ何を信じるの？」私は眉を上げた。

「力、支配」彼は明らかな欲望をもって言った。私は笑った。おそらく飲みすぎたせいだろう。自分の考えがまだ筋が通っているのかわからなかった。でももう恥ずかしさはなかった。

「そう...私は自由とか、自由意志、独立といったものを信じるわ...」彼は私の言葉を遮り、私の手を掴んでさらに暗い隅へ引っ張った。今日は皆が私を引きずり回すことにしたの？「何をしてるの？」彼が私を壁に押し付ける前に尋ねた。彼の大きな体が続き、私の腰をつかんで自分を押し付け、息ができなくなった。うわっ！少し強引だけど、他のものも感じた。ちょっと強引すぎる。

私は彼がさらに近づくのを防ぐため、彼の大きな胸に手を置いた。彼が私に擦り付けながら、自分がどれだけ硬くなっているかを感じさせてくるので、呼吸するのに苦労した。

「僕とはそういうふうにはいかないんだ...」彼は暗い視線で私を見つめながらささやいた。そして私が何かを言う前に、彼はキスをした。彼の唇が私の唇を覆い、柔らかく、しっかりとして、自信に満ちていた。彼の舌が道を開き、私の口内を探索し、荒々しく熱くなり、もっと欲しがった。私にもっと欲しいと思わせ、もっともっと。彼は私の唇を吸い、そして止めた。私は目を開け、再び呼吸した。少しぼんやりしていた。くそっ、すごく気持ちよかった。

「一緒に来て」彼はささやいた。何？どこへ？

「ダメ」私は言った。どこでもいいとわかっていながら。彼は深呼吸してから頭を傾け、私の首にキスをして、思考の流れを失わせた。脚の間に熱が上がるのを感じた。

「君も望んでいるのはわかってる」彼はささやいた。なんてこと！彼は自惚れ屋で自信過剰だ。なぜそれが魅力的なの？

「ダメ」私は嘘をついた。彼の唇が肌に触れる感触を楽しみながら。

「嘘をつくな。なぜダメなんだ？」彼は後ろに下がったが、あまり空間を与えなかった。一瞬、彼も私と同じくらい当惑しているように見えた。私は返答を考えた。

「そういうふうにはいかないの...あなたの名前すら知らないわ」

「ネイサンだ。もう行ける？」私は笑い、力を使って彼を押しのけることができた。

「ダメよ、ネイサン」

「なぜダメなんだ？」

「理由があるの」

「君が一緒に来るべき理由はもっとあるよ」彼は唇を噛み、再び近づこうとした。私は抵抗できなくなる前に、私たちの間に腕を伸ばした。

「時間の無駄にしないことをお勧めするわ」私は彼の体の周りを回り、彼と壁の間のスペースを離れた。

「これは何かのゲームか？」彼は私に向き直って尋ねた。

「え？」

「君がやってること」

「私が何をしてるって？」彼はほとんど笑顔を見せ、続ける前に唇を舐めた。

「手に入りにくいふりをしている」彼は近づいてきた。「僕のために踊って。誘惑して。僕を硬くさせておいて、ノーと言う」彼はいたずらっぽい表情で言った。彼はとても直接的で、それが私に影響した。太ももの間で欲望が脈打つのを感じた。私は深呼吸し、理性を探した。