第50話

「もう行く準備はできたかい?」彼は今度は微笑みながら私の目を見つめて言った。私は深呼吸をして、笑顔で「はい」と口から言葉が零れ落ちた。

彼は私を舞踏会場へと連れていき、警備員がドアを開ける距離に近づく直前で立ち止まった。

「もし辛くなったら、私を見るんだ。他には何も気にする必要はない」彼はまっすぐ前を見ながら言った。私も彼と同じ姿勢を取り、腕を組んで舞踏会場に入った。静かだった。音はなく、あちこちでささやき声が少しと、いくつかの笑顔、それが作り物かどうか判断できない笑顔、そしてその他のあらゆることが起こっていた。私たちは席に着くまでの道のりの半分で立ち止まった。

「そして最後に、本イベント...