第325話

「知ってる?」私は椅子から立ち上がり、彼を引き寄せながら言った。彼が離れていかないように、そばに置いておく必要があった。「あなたが利己的だってこと?」彼と密着した状態になって、私は言葉を続けた。

彼は振り向いて私を見たが、それは彼がそのまま立っていられる唯一の方法だった。バランスを取るために私にもたれかかっていた。

「俺が利己的だって?」彼は少し信じられないという様子で言った。これまで何度も会話をしていて、頭の中の小さな声が黙るように言うときと同じように、声がささやき、黙れと懇願していた。事態を大げさにしないようにと。でもいつものように、私はその声を聞かなかった。

「聞こえたでしょ、アン...