第270話

「どんなに切羽詰まっていても、妖精と契約を結んではいけない」それが母が私に教えた最初の教訓だった。まあ、互いに喧嘩していない時に教えようとしたんだけど。それなのに私は何をしたのか?

私は自分の人生を台無しにする可能性のある男、妖精の王と契約を結んでしまった。

「もう遅い、今さら引き下がれない」私は彼を見つめながらそう思った。

「一年前に友人を救ってくれと膝をついて懇願していた者にしては、随分と大胆になったものだな」彼は顔に薄笑いを浮かべて言った。

「もう一度言うが、一年が経った。そして私たちの取り決めに飽きてきたようだ」彼は完全に闇から出て、月明かりの中に姿を現した。

私は一歩後ずさ...